『トラジェクトリ』レビュー 異文化との交錯 越境文学

こんにちは,ヨカワユキです。

グレゴリー・ケズナジャットの小説『トラジェクトリー』を読みました。

2025年上半期の芥川賞候補にもなった作品。
アメリカ人である著者が日本語で書いた小説という点に惹かれ,『開墾地』に続いて手に取りました。

 

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『トラジェクトリー』ってどんな話?

主人公は,将来への不安を抱えたままアメリカの大学を卒業した青年,ブランドンです。
彼は大学で日本の英会話学校の講師募集を目にし,「よし,日本へ行こう」と決意します。

物語の中心となるのは,「異文化との交錯」

英語を母語とし,アメリカ文化を背景に持つブランドンが,全く異なる日本語や日本文化に直面しながら生きていく。
日本文化の中で生きてきた生徒や同僚たちが,アメリカから来たブランドンと出会い,何かを感じる。

劇的な事件が次々と起こるようなお話ではありませんが,異なる背景を持つ人間同士が触れ合うことで生まれる日常が描かれています。

 

率直な感想

読み終えた私の率直な感想は,「えっ,ここで終わっちゃうの?!」というものでした。

作品自体はまとまっているのですが,作品内であることが唐突に終わっており,それについては消化不良というか,モヤッとしています。

 

タイトル「トラジェクトリー(軌跡)」に込められた意味

「トラジェクトリー(trajectory)」は,日本語で「軌道」や「(辿ってきた道のりの)軌跡」を意味します。

このタイトルは,本作の内容を表していると感じました。

主人公ブランドンや,生徒の川村さん,同僚たちのそれぞれの人生の奇跡。
劇中に度々登場する,アポロ13号プロジェクトの軌跡。

これら別々の「軌跡」が,作品の中で交差し,重なり合う様子が描かれています。

しかも,アポロ13号の目的地である「月」自体が,軌道を描いて地球の周りを周っているということ。

このことも掛け合わせてタイトルをつけているのだと思います。

 

数時間あれば一気に読み通せる短めの作品なので,異文化とそこで生きる人に興味がある方は,ぜひ手に取ってみてください!

また,この本には表題作の他に『汽水』という短編も収録されていますが,こちらのタイトルも作品を読めば納得の掛け合わせです。

 

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