こんにちは，ヨカワユキです。
✓変わった場所に行ってみたい
✓いろいろな語学学習法が知りたい
✓高野秀行ファン
✓アフリカ好き
✓好奇心旺盛
なあなたに超絶オススメしたい本です。
私は爆笑しながら読みました。
とにかく著者 高野さんがいい
著者の高野さんは，考えていることや，やっていることがものすごくユニークです。
でもそれ以上に私が感嘆したのは，やりたいことに対する強い欲と執着心です。
やりたいことの内容がもはや特異点（謎の怪獣を探しに行くとか，ケシ栽培するとか）なのですが，とにかく実現できるまで決して諦めません。
どうにかこうにか実現できる道を見つけては行動するを繰り返します。
はたから見れば「それほんとにやるの！？」「大丈夫なの！？」みたいなことをどんどんやっちゃいます。
好き・やりたい にとても忠実な人，という印象です。
本書ではそのプロセスが惜しみなく描かれています。
高野さんにとって語学は，やりたいことを実現するための手段です。
彼は25言語以上勉強したことがあるらしいのですが，彼のやりたいことを実現するのにその言語が必要だからです。
とはいえ，言語に対する愛が本からあふれ出ており，言語を自分で分析しながら習得していく様子を読んでいると，人並み以上に言語に関心があることが伝わってきます。
言語，どうやって学ぶ？
そんな高野さんは言語の学び方もユニークです。
学生時代，英語を勉強するのが嫌でいかに楽にできるようにならないかと考え，教科書に出てくる頻度の高い単語を覚えればいいという結論にたどり着きます。
それで，教科書に出てくる単語の数を数えながらリストを作っていたら単語を覚えてしまったとか。
フランス語を学ぶときには，電車で見かけたフランス人に声をかけ，フランス語を教えてもらうことに。
その人の教えるモチベーションが低いと見ると，その人がフランス語で話す愚痴や日々の出来事を録音し，それを全部文字起こしする，という力技を発揮。
文字起こしをその人にフィードバックしてもらい，それすらも録音して文字起こし…
そんなこんなである程度身につけてしまったらしいです。
中国語を学習しているときは，中国語と日本語の漢字の発音の法則性を見つけるのに専念。
それを通してだいぶ中国語の発音を覚えたとのこと…。
すごくないですか！？
なくてもあるものでどうにか学ぼうと試行錯誤。
これらの工夫は，マイナー言語を学ぶときにも存分に発揮されました。
言語が身につくか否かは，その言語を身につけたいとどれだけ強く思い学習するかによる，という揺るがない真実をつくづく思い知らされます。
政治や社会，人間関係と切り離せない…それが言語
たくさんの言語を学び，世界のあちこちを旅してきた高野さんは，言語が政治や社会・人間関係といかに結びついているかについても述べています。
謎の怪獣を探しに行ったコンゴでは，使われている言語が階層になっているとのこと。
最上層にあるのは公用語のフランス語。
官庁や学校，病院など公的な場面で使用されます。
その下の層には，人々が街で話す共通語のリンガラ語があり，
さらにその下の最下層に，自分の村で家族や親族と話すときの言語（その民族独自の言語）があります。
コンゴのこの状況は歴史が生み出したものですが，日本語の層しかない日本とは全く違う言語世界が作られています。
高野さんが行ったミャンマー・シャン州でも言語と政治が強く結びついています。
当時のシャンの人たちは，ビルマ民族からの独立を目指し武力闘争していました。
シャンの人たちには自分たちの言語がありましたが，軍事政権がシャンの言語を教えることを禁じ，公共の場で使うことも好ましくないこととされました。
それでシャンの若者が流暢に使える言語は，学校で学ぶビルマ語なんだそうです。
敵の言語に流暢になるなんて，なんという矛盾！
ディープな話はまだまだ続く
ほかにも，
・方言と共通語の関係
・ある言語のうまい／下手によって序列が生じる言語内序列
・言語の「ノリ」
・クリスチャンの言語研究
などが高野さんの経験とともに論じられており，興味深いのなんの…。
高野さんは言語を「目的を達成するための道具」として学んでいますが，「ただ使えるようになればいい」思っているわけではないことが本書から伝わります。
言語もそこに暮らす人々もどちらも尊重し，その言語を使って人々の中に入っていく。
それが高野さんです。
動画でもレビューしています。
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「語学って上達するの大変だよね。マルチリンガルの人とかマジすごいわ」
と共感をおぼえ読み始めましたが，そんな薄っぺらい印象を遥かに超えるディープな話が盛りだくさんで本当に面白かったです。